
 1975年福岡県生まれ。01年、初監督作品『モル』がぴあフィルムフェスティバルにてグランプリ含む二冠獲得。04年、監督作として伝説のフォークシンガー故高田渡の笑劇的音楽ドキュメンタリー『タカダワタル的』公開。東京国際映画祭で特別招待作品として上映され、公開後は記録的ロングランとなる。同年、脚本・監督作『月とチェリー』も公開。大学の官能小説サークルを舞台に、恋と愛と性欲のトライアングルに翻弄される男女の青春をコミカルに描き好評を博し、ドイツフランクフルトでの映画祭ニッポンコネクションにて招待上映される。07年には脚本で参加の『さくらん』(安野モヨコ原作・蜷川実花監督)が公開された。同年、監督・脚本を手掛けた『赤い文化住宅の初子』(原作・松田洋子)が公開、薄幸な少女の淡くもビターな恋心を描いた。また、蒼井優主演『百万円と苦虫女』が現在公開中。また、モントリオール世界映画祭にも出品された蒼井優主演『百万円と苦虫女』のDVDが絶賛発売中。同作は2009年イタリアのファーイースト映画祭にて観客賞を受賞している。その他、WOWOW『蒼井優×4つのウソ カムフラージュ 都民・鈴子〜百万円と苦虫女 序章〜」(08)、TX「週刊真木よう子 蝶々のままで♥」(08)の演出を担当した。執筆活動として、『百万円と苦虫女』小説版(幻冬舎)、また、初のオリジナル小説『ロマンスドール』(メディアファクトリー)も絶賛発売中。現在、CUT(ロッキングオン)にて初のエッセイを連載中。



|  | −−この題材をタナダ監督が撮ると聞いて、なるほどと納得したんですが、本人の意気込みはどうだったんですか。
「意気込みは前からあったんですけどね。皆さん原作は面白いと言ってくださるんですが、ただR指定などの問題で、お金を出してくれるところがなかなかなかったんです。数年を経て、ようやくここまで来たという感じですね」
−−先ほどなるほどと言ったのも、タナダさんの追い求めているテーマがお金だったり性的なものが多かったからなんです。そういう意味ではこの作品に必然性みたいなものを感じたんじゃないでしょうか。
「映画を作るにあたっては、人さまの人生を描くわけですからね。『赤い文化住宅の初子』だったら経済的な事情、『俺たちに明日はないッス』だったら、性のことだったりと。それらは避けて通れないわけです。
でもだからと言って、それをそのまま描きたいわけではないんですよ。むしろそれらにまつわる人の感情ですよね。『俺たち〜』に関しては、童貞を捨てたいと思ってる男の子たちの翻弄される気持ち、繊細な気持ちを描きたいと思ったんです」
−−この映画を観ていて、童貞に対する描写がリアルだなと思いました。女性であるタナダ監督がどうして童貞の気持ちがこんなに分かるのかと不思議に思ったんですが。
「それはやはり原作がしっかりと描かれていたからではないでしょうか? 学生時代には気付かなかったような男の子の繊細な気持ちや、どうしようもないんだけど、一生懸命な部分など、原作に惹かれた部分が大きかったですからね。今となっては本当に気付かなくてごめんねという気持ちもあるんですが(笑)」
−−今までご自身で脚本を書いてきたタナダ監督ですが、今回は脚本には関わってませんね。
「いくら原作が好きだといっても、私自身が女なので分からない部分もたくさんあるだろうなとは思っていたんです。そこで男性の脚本家である向井さん(=『リンダリンダリンダ』などの向井康介)にお願いしたんですけど、出来あがった脚本がとても面白かったんです。だからこそ、17歳という不安定な年齢の男の子たちの感情の動きを、きちんと丁寧に撮らなくてはいけないなと思いましたね」
−−そういえばこれまでタナダ監督が描いてきたのは女の子が多かったですよね。
「前から男の子のこと、異性のことも描けるようになりたいなと思っていたんです。今回それが出来たかどうかは別として、女だからこそ、より一生懸命撮らなくてはいけないと。
今までどんなタイプの作品を撮っても、女性監督ならではの、といった書かれ方をしてきたので、これでも書けるものなら書いてみろ、という思いもあります(笑)」
−−脚本を自分で用意しなくてもいい状態というのはどういう気分でした?
「楽しいですね(笑)。以前にドラマではそういう経験があって、映画に関しては初めてだったんですが、どちらも自分が面白い作品を書くと思える脚本家の方にお願いしましたからね。自分の中でモヤモヤとしたことが具体的な文字となって返ってくるという。この面白さはなかなかないですよね」
−−たまたまかもしれませんが、『神童』『コドモのコドモ』に続き、『俺たち〜』と、さそうあきらさんの漫画が次々と映画化されています。彼の作品を映画化したいという魅力は何なのでしょうか。
「台詞がぎっしりと書かれているような漫画ではないんですが、その余白の部分に情感が詰まっているんですよね。さそう先生の漫画を読むと、映画にしたくなるんだと思います。もちろんその余白の部分を映画化するという作業はものすごく難しい作業ではあるんですけども、挑戦したくなるんですよね」
−−その余白を映画化するということに挑戦してみて、うまくいった点などは?
「うまくいったかどうかは自分では分からないんですが、さそう先生独特の画があるので、あれには最初は悩みましたね。生身の人間がやるとあの乾いた感じは出せないですからね。あれは漫画ならではですよね」
−−漫画から実写への変換作業において、どういう点を重視されたんですか?
「実際に演じているのが10代から20代の人たちだったんで、若い彼らの息使いを汲み取れたらと。もちろん男の子のエッセンスや、女の子のサバサバした感じは漫画から受け取ったものではあるんですが、やはりこれは映画なので、彼らの息使いがもう少し生々しくてもいいんじゃないかと思いました」
−−キャスティングが絶妙でした。特に素晴らしかったのが、安藤君を演じた草野イニさん。彼はどうやって見つけたんですか?
「オーディションです。太った体形の人をたくさん集めて(笑)。彼のたたずまいが良かったんですよ。下手に何かをやろうとしないところも。やはりオーディションに来る人って何かをアピールしようとするんですけど、彼はそういうのがなくて。お芝居も安定していて、うまかったですしね」
−−女の子にキスされている時のカチカチになった表情とか、いったいこの俳優さんは誰なんだろうと思いましたね。
「でも彼は主要キャスト6人の中では最年長なんですよ(笑)。撮影当時は確か28歳でした。柄本(時生)君と10くらい違うはずなんで。草野君だけを見てると高校生もいけるかなと思うんですけど、実際に若い人たちと並ぶと、大丈夫かなという声もあがったのは事実です。でもやってみたら案外大丈夫でしたね」
公開情報
□2009年05月22日よりDVDリリース
2008年11月22日、ユーロスペースにてロードショー
以降、名古屋シネマテーク、梅田ガーデンシネマ、京都みなみ会館、神戸アートビレッジセンター他、全国順次公開
LINK
□作品詳細『俺たちに明日はないッス 』
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